マリカフェ

世界の色んな料理や面白いレシピを見ると、ついカッとなって作ってしまう、ほぼ好奇心と食欲のみに突き動かされている料理ブログ

【文学飯】魯山人の錦木

友人に教えてもらった、「錦木(にしきぎ)」

レシピは色々で鰹節にネギ、わさびや海苔やら色々混ぜたのを、ご飯にかけて食べるという。が、ここはひとつ、魯山人のいうところの「錦木」と洒落込んで見ることにした。

魯山人の「夏日小味」には錦木についてこう書かれている。

上等のかつおぶしを、せいぜい薄く削り、わさびのよいのをネトネトになるよう細かく密におろし、思いのほか、たくさんに添えて出す。で、これが食い方は、両方適宜に自分の皿に取り、ざんぐりと箸の先で混ぜて醤油を適量にかけ、それを炊きたての御飯の上に載せて、口に放り込めばよいのである。同時にアッと口も鼻も手で押えて、しばし口もきけないようなのが錦木の美味さである。この場合、浅草のりなぞを混ぜてもよいが、むしろそれは野暮であろう。最高の錦木とは、上等のかつおぶしの中心である赤身ばかりを薄く削ること、太いよいわさびを細かいおろし金で密におろすこと。御飯をこわくなく、やわらかくなく、上手に炊くこと。そして炊きたてであること。食器は平らな皿に入れないで、やや深目の向付に盛ることである。

 
なんでも錦木は、京都のお茶屋なんかで夜遊びして、そのまま泊まり込んだ朝に、芸者がおはようさん、とやってきて、錦木でままおあがりやすか、と朝食に出されるものらしい。

幸いカリフォルニアではわさびが栽培されているので、ちゃんとしたわさびも買うことができる。小指ぐらいの長さのが四ドル。

さすがに鰹節そのままは手に入らないので、ちょっとふんぱつしていい削りぶし(=にんべんのパックではないやつ)も買い込んだ。

これで家族のいない昼間にひとりご飯を炊き、ちょっとワクワクしながらわさびをおろす。

炊きたてのご飯の上にふゎさーっと削りぶしを乗せ、わさびを乗せる。醤油もかけて、かき混ぜて、ワッとそのまま口の中に入れる。



醤油の湿気で少し塊になったもしゃっとした鰹節、そこに時々わさびがワッと口から鼻から襲ってくる。・・・うん。鰹節とわさびと醤油の味だね。


錦木とはやはり名付けの風流で特別感六割増かもしれない。「削ったかつおぶしの片々を、木の錦木のへらへらになぞらえたもの」が錦木ではないかと魯山人は書いている。


どこかのキャバクラで呑んだくれ、朝になって酢と油と卵の黄身をかき混ぜて作ったソースを焼いたパンに乗せ「モンマルトルの石畳」とでも名付けて出されたらやはりこんな感じに思えるだろうか(要はトーストにマヨネーズ乗せ)。


などと余計なことを考えながら時々わさびに鼻も口もアッ、とやられつつ高級ねこまんま的な錦木をかき食らっていると、確かにこれはネギも要らぬ海苔も要らぬ、これはこれでこれ以上何も足さず何も引かず、が粋ですっきりしたものに思えてきて、また食べたくなるから不思議である。