マリカフェ

世界の色んな料理や面白いレシピを見ると、ついカッとなって作ってしまう、ほぼ好奇心と食欲のみに突き動かされている料理ブログ

【美味しんぼ】何もない時葱油餅

子供の頃実家は漫画禁止でした。友達に借りてこっそり読んだりはしてましたが、ある日気がつくと漫画を禁止にしたはずの両親の部屋から出てきたのは大量の「美味しんぼ」・・・。

それからはもう家族で美味しんぼを読みまくっていました。話が進むに連れ、作者のちょっと香ばしい主義主張の織り交ぜがうーん、という時もありましたが、ここで今まで知らなかった日本や世界の料理に触れ、つい食べ物のことばかり考えてしまう土台になったことは間違いありません。

それにしても食べ物一つで大の大人が喧嘩になったり、美味しいもので和解したり、おかしくないか?と思って子供心には読んでいましたが・・・食い意地の張った大人になった昨今、ビジネスや公の場であそこまで感情を爆発させることはないにしろ、まあ美味しいものが人の心を動かすというのは、あるよな・・と多少は納得するようになったかもw

さてそんな美味しんぼで初めて知ったローピン(烙餅)という料理。漫画では、別荘が吹雪に見舞われ食料がないとパニック(?)に陥っているところを、山岡さんが台所にあった小麦粉と塩にごま油、そして裏にいかっていた葱を使ってささっと作ったメニューでした。


我が家も春休みの朝、冷蔵庫を開けたら何にもなーい!さあどうするとなったときに、冷蔵庫に葱がいかっていたので早速作ってみましたよ。

美味しんぼでは烙餅と紹介されていましたが、葱がたっぷり入るのは多分葱油餅(蔥油餅)と呼ばれるものなんじゃないかなぁ。ベイエリアの中華料理屋さんでも、粉もんが得意なところに行くとよくあります。

家にある粉で作れますが、ちょっと前に中華スーパーで買ってきた専用の粉がありましたのでそれを使いました。

専用と言っても普通の強力粉に、ビタミンやら葉酸やらが添加されているらしい・・

粉に熱湯と冷たい水を入れて軽くこね、ちょっと休ませてから薄く伸ばし、表面にごま油を伸ばしたあとみじん切りにした葱をまぶします。

手が粉粉だったので写真はないのが残念ですが、それをくるくると巻いていき、棒状になったものをとぐろのように巻くか、ぐちゃっと丸めて団子にして潰し、ちょっと綿棒で伸ばします。

生地は結構柔らかめ。油も塗るので破れやすい〜。

本当だったら油たっぷりのフライパンで焼くのがお約束ですが、あまり油が多すぎるのもアレなので(笑)、焼き目がついたらオーブンに入れてみました。ちょっと黒こげなのは油が足りなかったからですねぇ〜

パイ生地は畳んで層にしますが、これはくるくる巻いて層にする感じ。外はパリッと、中も層になってていい感じです。ここでは自家製ポン酢につけてさっぱり食べてみました。

美味しんぼのは、ずいぶん厚い渦巻き状になってましたが、あれはもしかしたら火を通すのにずいぶん時間がかかるかもしれないなぁ。お腹が空いている時に、山岡さんは生地を1時間しっかり寝かせたり、結構ささっとじゃなくて時間のかかる作り方をしていたかもしれませんw

爺爺のレシピ

83歳の義父は元シェフ。義理両親は自分の家族と、一緒にレストランをやっている親戚の家族ぐらいしかアジア人がいないような場所で、中華料理屋さんをずっとやっていました。まあ、白人の好みに合わせて出す中華料理は、どちらかというとアメリカン・チャイニーズ・フードではあるのですが、家族や自分達に作る食事はれっきとした広東料理。

食に対する興味というか執念というかは未だ尽きず、と言う感じで(広東料理に「しか」興味がないのがたまに傷ですがw)、今でも家族が集まると食事を作ってくれるのは義父。

そんな義父の冷蔵庫には手書きのレシピがたくさん貼ってあります。こんな束になっている!

レシピ、分量やなにやら色々試してみて、改訂している様子がわかるかと思います、下には赤でちゃんと作った後のメモもしてある。

80歳をすぎても、探求を続ける爺爺(ヤーヤー)。

子供達の中では私が一番と言うか唯一漢字が読めるので、こういうのもチョチョっと教えてもらうことができるのはラッキー。

さて、これは一体何のレシピでしょう。


「西米焗布甸」

布甸は、布丁と書くこともありますが、これで北京語だとブーディェン。



正解はこちら。

・・・タピオカ焼きプリンのレシピでした。

これ、アメリカでは見たことないんですが、香港で飲茶に行くと普通にあるものなんだそうです。1人用の小さめの容器に入っていることが多いみたいですが、ここではケーキ型でどーんと出てきました。


さて、レシピをもらったのは良いのですがまだ全部ちゃんと読んでいません。でも漢字なのでやっぱりみるとなんとなくわかるところが、素晴らしい。人造牛油っていうのはそうマーガリンですw

あえて日本語のレシピは載せ(られ)ませんがもしよかったら、頑張って解読して試してみてください!

ペルーのヅケ、肉野菜炒めに、そぼろご飯

南米の料理というとカリフォルニアではやっぱりメキシコ料理が美味しいですが、実はペルー料理の方が個人的には好きです。

ペルーというとどうしてもコンドルは飛んでいく〜、フジモリ大統領に、アンデス山脈・・ぐらいしかイメージが無い。そういえばサッカーもそんなに強く無い。

でも実は、ペルーのご飯はうまい。しかも結構日本人の口に合う。

その理由は多分、

結構魚介類を使う
お米を食べる
移民の国なのでアジア風味の料理もある

あたりなのかなぁ、と考えるのですが、行ったこともないのに「ペルーはご飯が美味しい国」というイメージがここに来て新たにインプットされました。

そんなペルー料理の中でもお気に入りの3品はこれ。

セビーチェ

無理やり言うと南米版の刺身や魚介のヅケ、といった感じのもの。色々なお魚やエビなどを、ライムベースの汁につけてあります。これはサンフランシスコにあるちょっと高級なペルー料理屋さんLa Marでいただいたもの。

ココナッツミルクを足してみたり、一番左のは「ニッケイ」という名前で、和風にお醤油や海苔などもトッピングされています。

ライム汁につけるのはお酢で締めるのと同じ効果も期待できるとか。一昨年イギリスのミシュランレストランの厨房に立たせてもらった時も、突き出し用のセビーチェ担当になったんですが、ここでは注文してからソースと和える作り方をしていて、軽く意義を唱えてみたけど却下されましたw まあ新鮮だったらそこまでがっつり漬けなくても大丈夫か。


ロモ・サルタード

ペルーの肉野菜炒め、といったところでしょうか。牛肉、玉ねぎ、ピーマン、トマトなどを炒めたものです。しかも味付けは醤油とお酢!これ、実は中華料理の影響を受けたお料理なんですって。ご飯もついてくるし、食べるとずいぶんホッとする味です。

でもちょっとポイントは、フライドポテトがつくところ!お店や家庭によって、ポテトはサイドに置いてあったり、上に乗っかっていたり、一緒に炒めちゃったりとレシピは色々。これがあるとちょっと味も目先も変わって、中華ではない、ペルー料理、になる不思議。

この料理については、リミアというサイトにレシピも寄稿いたしました〜

limia.jp

冬の晩御飯時に、実際にワチャワチャご飯を作りながら慌てて写真を撮ったので写真が薄暗い!さらにポテトはちょっと焦げてますwwフードスタイリングどころじゃない!!

アロス・タパド

これは勝手にペルーのそぼろご飯、と呼んでいるもの。炒めたひき肉をご飯でこんな感じにサンドイッチにして盛り付けたお料理。これもトマトなどを入れてひき肉を炒めるんですが、ご飯に合う〜ホッとする〜(ホッとする味って表現もなんなんだと思いますが、食べ慣れた味ってことですかね)。

これはお店でいただいたものですが、これもお家で簡単に作れるのでぜひお試しください。レシピ、こちらに書きました。

limia.jp

ペルー料理を世界に広めた功労者

魚介もお肉も美味しいペルー、と言うイメージが自分の中では強まっている昨今ですが、実はペルーを食の国、として世界に認識させるに至った立役者というのがいるのです。

Gaston acurio.jpg

ペルーのシェフ、Gastón Acurioがその人。

彼を取材したドキュメンタリー「Finding Gaston」というのを見て興味を持ったのですが

トレイラーはこちら⇩

www.youtube.com

ペルーの政治家の息子として生まれ、将来後を継ぐことを期待されながらも、自分のパッションは料理だ、と法律事務所の仕事を数時間で逃げ出して料理人に。

ペルーというとやはり政治的に不安定とか、貧困とかマイナスなイメージしかない中、子供達の食育、給食提供のための活動をしたり、地元の農家や漁師と直接契約してレストランに材料を仕入れたりと、ペルーの食文化のポテンシャルを引き上げる活動をしたり、世界中にペルー料理のお店を出したりして、ペルー料理を世界に広める役割を果たしたんだとか。

ドキュメンタリーを見ていても、街を歩けば聖人かアイドルか何かみたいにわーきゃー取り巻かれて、ペルーの英雄みたいになっててすごかったです。マーケットにいる、インディオのちっちゃいおばちゃんたちもキャーキャー言ってセルフィー撮ってるのも可愛かったw

そしてドキュメンタリーを見ていて気がついた、彼のお店サンフランシスコにもありました。

エンバーカデロという、サンフランシスコの湾を望むところにあるお店La Mar
lamarsf.com

そう、上に載せたセビーチェの写真食べたところじゃ!そうだったんか〜

ドキュメンタリー見る前にもお友達と訪れたことがありました、ピスコサワーに、串焼きのお肉に、色々美味しかった記憶あり。以前出張できたお友達にも紹介したら喜ばれた、結構オススメです。







ガストンさん、この他にも中華とペルーのフュージョン料理Madam Tusanをペルーにオープンしたり、ペルーと日本料理のフュージョンのレストランも計画中だとか。

彼のレストランはちょっとお高めなのでしょっちゅう気軽には行けませんけど、ここら辺には家庭的なペルー料理やさんもいくつもあるのも嬉しい。日本にもペルーからの人は結構住んでいそうですし、きっと美味しいところがあるんだろうなぁ。ぜひ見かけたら試してみてください。

【文学飯】魯山人の錦木

友人に教えてもらった、「錦木(にしきぎ)」

レシピは色々で鰹節にネギ、わさびや海苔やら色々混ぜたのを、ご飯にかけて食べるという。が、ここはひとつ、魯山人のいうところの「錦木」と洒落込んで見ることにした。

魯山人の「夏日小味」には錦木についてこう書かれている。

上等のかつおぶしを、せいぜい薄く削り、わさびのよいのをネトネトになるよう細かく密におろし、思いのほか、たくさんに添えて出す。で、これが食い方は、両方適宜に自分の皿に取り、ざんぐりと箸の先で混ぜて醤油を適量にかけ、それを炊きたての御飯の上に載せて、口に放り込めばよいのである。同時にアッと口も鼻も手で押えて、しばし口もきけないようなのが錦木の美味さである。この場合、浅草のりなぞを混ぜてもよいが、むしろそれは野暮であろう。最高の錦木とは、上等のかつおぶしの中心である赤身ばかりを薄く削ること、太いよいわさびを細かいおろし金で密におろすこと。御飯をこわくなく、やわらかくなく、上手に炊くこと。そして炊きたてであること。食器は平らな皿に入れないで、やや深目の向付に盛ることである。

 
なんでも錦木は、京都のお茶屋なんかで夜遊びして、そのまま泊まり込んだ朝に、芸者がおはようさん、とやってきて、錦木でままおあがりやすか、と朝食に出されるものらしい。

幸いカリフォルニアではわさびが栽培されているので、ちゃんとしたわさびも買うことができる。小指ぐらいの長さのが四ドル。

さすがに鰹節そのままは手に入らないので、ちょっとふんぱつしていい削りぶし(=にんべんのパックではないやつ)も買い込んだ。

これで家族のいない昼間にひとりご飯を炊き、ちょっとワクワクしながらわさびをおろす。

炊きたてのご飯の上にふゎさーっと削りぶしを乗せ、わさびを乗せる。醤油もかけて、かき混ぜて、ワッとそのまま口の中に入れる。

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醤油の湿気で少し塊になったもしゃっとした鰹節、そこに時々わさびがワッと口から鼻から襲ってくる。・・・うん。鰹節とわさびと醤油の味だね。


錦木とはやはり名付けの風流で特別感六割増かもしれない。「削ったかつおぶしの片々を、木の錦木のへらへらになぞらえたもの」が錦木ではないかと魯山人は書いている。


どこかのキャバクラで呑んだくれ、朝になって酢と油と卵の黄身をかき混ぜて作ったソースを焼いたパンに乗せ「モンマルトルの石畳」とでも名付けて出されたらやはりこんな感じに思えるだろうか(要はトーストにマヨネーズ乗せ)。


などと余計なことを考えながら時々わさびに鼻も口もアッ、とやられつつ高級ねこまんま的な錦木をかき食らっていると、確かにこれはネギも要らぬ海苔も要らぬ、これはこれでこれ以上何も足さず何も引かず、が粋ですっきりしたものに思えてきて、また食べたくなるから不思議である。