ネット上の書評や映画レビューやレシピなど、気になったものはブックマークして、時間がかかっても意外とちゃんと見たり読んだり作ったりすることが多いです。今回はそんな中でも映画レビューを目にしてから秒速で映画を見て、秒速でそこで気になった食べ物に出会ったお話。
5歳の記憶とGoogle Earthだけで、生まれ故郷と家族を探す実話
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インドの貧しい家庭に生まれた5歳の少年サルー。夜の鉄道の駅に残飯や小銭を探しに向かう兄についていき、迷子になってしまいます。なんと乗り込んだ列車がサルーを1800キロもはなれたカルカッタまで運んでしまったのです。
えー、1800キロというと、東京から上海ぐらいだそうです・・(!)それって外国!!!
実際インドでもそれだけ移動すれば外国も同然。ヒンズー語しか話せないサルーは、ベンガル語中心の混沌都市カルカッタで完全に迷子になってしまい、結局家には帰れず。孤児院に入れられ、その後オーストラリア人夫婦に引き取られ、タスマニア島で育ちます。
そんな彼が、ひょんなことからGoogle Earthを使い、自分の記憶の中に焼き付いている風景だけを頼りに6年かけて画像を見まくり、そこから自分の生まれ故郷、そして家族を探し出す、とてつもない話。そして最後は涙がちょちょぎれました。しかもこれ、実話なんだそうです。
陳家ブログおギリシャ編でも言及させていただいた、id:DaysLikeMosaicさんの映画ブログのこちらの記事に、裏話含め紹介されています。この記事を読んで速攻Netflixにあった映画を見てしまいました。
主役のデヴ・パテルが私好みの濃いイケメンなのもよろしいですが(実際のご本人とは似ても似つかない)、彼が演じるオーストラリアでのサルーより、子役が演じる、インドでの場面が何よりも衝撃というか、深く深く残ります。この子役の演技もすごい(そしてとても可愛いらしい)ですが、そこらへんの話もDaysLikeMosaicさんの記事に詳しいので、ぜひチェキラッチョ!
サルーが食べたかった揚げ菓子
この映画の中で、サルーが自分の故郷、家族のことを記憶だけでなく感覚的に思い出し、6年間に渡りひたすらGoogle Earthの画像を見続けるきっかけを作った食べ物が出てきます。
走行中の貨物列車から石炭を盗み、それと交換にミルクをもらうサルーと兄グドゥ。サルーよりずいぶん年上のお兄ちゃんグドゥは、父親のいないサルーにとっては、兄であり父親的存在だったそう。
そんなグドゥに、あれ買ってよ、とサルーがお願いするのがこれ、インドの揚げ菓子「ジャレビ」
「また今度、一個買ってやるから」「お店ぜーんぶ買ってよね」
・・・結局ジャレビを口にすることはないまま、サルーはその後迷子になり、遠いオーストラリアへと渡ることになります。
そして25年後。
オーストラリアでもタスマニア島というちょっと田舎で、白人の両親に育てられたサルー。きっとそれまではインド料理なども口にする機会はそうなかったんじゃないかと思いますが、進学のために出てきたメルボルンで、インド系の学生と交流する機会が生まれます。
そしてパーティーで訪れたインド系学生のアパートのキッチンに置かれていたのが、このジャレビ。
それを恐る恐る手に取り、匂いをかぎ、一口かじってみるサルー。そして思い出す兄との記憶。
もちろんそれまでも、ずっとインドの家族のことは思い続けていたけれど、実際に昔の自分と結びつくものを手に取り、口にして、その気持ちや自分の記憶がよりリアルなものとして蘇ったようなシーンでした。
ジャレビとは
今見返して見たら、ジャレビが出てくるシーン、本当に一瞬だったんですが、やはり食べ物のことが気になる身としては、あの赤っぽい色は何?!どんな味?!とめちゃくちゃ気になります。
材料は小麦粉、ひよこ豆の粉。これをイーストで少し膨らませ、着色料などで色をつけ、油に生地をたらしながら揚げていきます(この部分は、アメリカにもあるフェンネルケーキに似ている)。
生地が揚がったら、サフランなどが入ったシロップにつけます。シロップが染み込んで甘く、でもサクッと感も残しているのが特徴。と言うより、激甘のようです。
おやつ、デザートとしてだけでなく、特にお祭りや週末の朝ごはんに、ミルクと一緒に食べることもあるそうです。インドのテレビコマーシャルでは、「お母さんが朝ごはんにジャレビを作ってくれる」というシーンがあったりも。
日本語でもジャレビ、で検索すると、インドを旅行した人が駅などで買ったりしている記事が出てきます。大きいのが6個ぐらいで約13円ぐらいらしい(10年前の値段)。でも映画では、その1個分も買うことができなかったサルーとグドゥ(涙)
ジャレビを探せ
さてこのジャレビ、食べてみたいけれど、アメリカにはあるんだろうか。
これは、よく行くインド食堂+食料品店が一緒になった店のデザートコーナー。ここでは見たことがない気がする。
そうでなくてもインド(そして中東)のお菓子は頭がキーンとなるほど激甘。なければ作ってみるというのも辛そうだ・・・、きっとインドコミュニティが多いシリコンバレー近辺の店にはあるだろうか、こりゃ問い合わせるかな・・・と思いながら家族と夕食に出かけました。
すると帰りに立ち寄った中東系食料品店のデザートコーナーに・・・
ん?
こ、これは、もしかしてさっき映画で見たやつでは!?
でもここは中東マーケット。
お店のおじさんに「これなーに?」と聞いてみると、「これはインドのお菓子なんだけどね・・」
「あ、ジャレビでしょ!」
「試してみる?」とおじさん、このプラスチックの蓋を開けて1個取り出してくれました。売り物だけど、いいのかい?
旦那と半分づつ分けてみました。
ご覧の通り、芯までシロップに浸かっています。
甘い。
揚げたてではないから、もっとシナシナかと思いきや、そこまでひどくない。
食べたことないはずなのに、何か似たようなものを食べた記憶があるぞ。
旦那はなんども使った油の味がする、と一口でギブアップ。でも私はなぜかその変な懐かしさから、3口ぐらい行ってしまいました。
6分かけて思い出した記憶の味
ジャレビを口にして、故郷と家族を探し始めたサルー。
食べたことのないジャレビを口にして、何か子供の頃に食べたものを思い出した私。
アメリカには絶対にない味、多分日本で食べた、日本独自のお菓子だったはず。でもなんだか全く思い出せない・・・。
Google Earthに頼ったサルー。そして、Google 検索に頼った私。
名前も実態も覚えていないお菓子をどう調べればいいのか。
「和菓子 揚げ菓子」
こんなファジーなキーワードで出てきた検索結果。そしてわかりました。
これだ!
ものによっては、芋けんぴ、外のコーティングがもっとペトッとしていて、飴が中にちょっとしみててじわっ、でもまだカリッ、という部分も残ってる、ウェットタイプ的なものもありますよね。
ジャレビのメインの部分は芋っぽくはないけれど、食感と風味が、なんだかそんな感じです。
かりんとうにも少し似てるけど、やっぱり思い出すのは芋けんぴ。ジャレビは、ウェットタイプの芋けんぴに似ている!!
サルーは6年かかった、そして私は6分かけて見つけた故郷(の味)。いずれにしても、グーグル先生お世話になりました。
長年忘れていたものでも、嗅覚や味覚として現れると、それは一瞬で人間の記憶を呼び起こすものなのかもしれません。自分の中でもきっと、そういうものがあるんだろうなあ。
日本語のトレイラー。ジャレビも出てきたよ!