ロンドンで人気のデリ・カフェ「オトレンギ」を経営するヨタム・オトレンギさんとサミ・タミーミさんによる料理本「エルサレム」。これを全品作るプロジェクト17品目はこちら!
これ、何か見覚えありませんか?
そう・・・南蛮漬け!!
料理本では「甘酸っぱいソースにマリネした魚」というのがレシピの名前ですが、衣をつけて揚げた魚やパプリカ、玉ねぎ、トマトなどの野菜を、甘酢ソースに漬けたものです。もうまんま南蛮漬けです。
つけ汁にカレー粉が入っていますが、味も日本で食べる南蛮漬けとあんまり変わらずでした。
南蛮漬けの起源は、ササン朝ペルシャ・・!?
南蛮漬け、南蛮と言うからには、ポルトガルやスペイン人が日本に持ってきたんだろうけど、じゃあ似たような料理があっちにもあるはず…
と調べてみたところ、どうやら
エスカベッシュ(またはエスカべチェ)
がもとの料理っぽい。
スペイン、ポルトガルやフランスなどで作られる、まんま甘酢ソースがけ。
お魚の他にお肉で作られることもあるそうです。
甘酢ソースにサフランなどが入るところが微妙な違い。
結構クックパッドにもレシピが載っていました。
さらに面白いことに、エスカベッシュという料理はもともと古代ペルシャ、今のイランが起源の料理なんだそう。
ササン朝ペルシャ・・・って、世界史でやったよな!!
7世紀にアラブの侵攻を受ける前、まだイスラム国家じゃなかった頃のイラン。
ゾロアスター教とか!
そういえば正倉院に残っているペルシャの工芸品なんかも、ササン朝時代のものだったような。あんな時代。
そんな古代から伝わる料理なんですって!ヒ〜!!!!
エスカベッシュという言葉も、ペルシャ語のal-sikbaj(発音はアシクバージみたいな感じ?)から来ているそうで、sik=酢、ba=煮込み、みたいな意味だそうです。
主に羊の肉を甘酸っぱく煮込んだ料理で、13世紀に書かれた料理本にその魚バージョンの記載も見受けられるのだとか。
言われてみればさもありなん!
ご飯にレーズンが入る中東炊き込みご飯を始め、甘いものとしょっぱいものの組み合わせ料理って、実はペルシャ起源のものが多かったりするのは何となく知っていましたが、日本でも慣れ親しんでいたこの料理が、そんな遠い時代の遠い国から来たものだったとは意外でした。
ゾロアスター→イスラム→キリスト教→仏教(と神道)の国へ
この料理、ペルシャを征服したアラブ人がさらにスペインやその一帯に侵攻した時、ヨーロッパにもたらされたようです。
ウマイヤ朝・・・うーん、細かすぎて覚えきれなかった名前かも。
思えば歴史の授業ってなんであんなに暗記が多かったんだろう。
こういう流れで覚えていたら楽しかっただろうになぁ・・。
もともとは羊をメインに使う料理でしたが、敬虔なキリスト教徒は受難の日である金曜日にはお肉を食べずに魚を食べる習慣があり、それ用の魚料理として、スペインやポルトガル(フランスやイタリアの一部にも)に、広まったんじゃないかと言われています。
そしてそれが、布教や交易を目指してやって来た南蛮人を介して日本に伝わった・・・・
と思うと、なんて壮大でロマンチックな料理!!!!!
ゾロアスター教の国の食べ物だったものが、イスラム教徒によりヨーロッパにもたらされ、ヨーロッパのキリスト教徒により、日本にもたらされ。
しかもこの料理、今のイランには残っていないんだそうです。
伝播した先だけに残る遠いササン朝の記憶・・・。
次回南蛮漬けを作る時は、ぜひそんな壮大な歴史に思いを馳せて見て下さい。
ご本人にご報告
料理本を買ったのはもう4年前ですが、その当時本を見てあれ、これは南蛮漬けじゃん!と思い、思わずオトレンギさんに「日本にも同じ料理があるでぇ!!」とお知らせしたくなり、実際にお知らせしました。
@marikosuzy that's interesting. I didn't know.
— Ottolenghi (@ottolenghi) August 29, 2013
「それは知らなかった、面白いね」
たった一言のレスに喜ぶミーハーなワシww